投資初心者から上級者まで、
幅広い層に人気の運用商品「ETF」をご存知ですか?
ETFとは、Exchange Traded Fund の略で「上場投資信託」のことです。
ETFは投資信託ですが、取引所に上場しているため、株式と同様に取引することができます。
また国内だけでなく、さまざまな国を対象とし、それぞれの株価指標に連動するよう設計されています。
ETFは手軽に分散投資ができ、安定した運用が行えるため、投資初心者でもはじめやすい商品です。
近年は米国ETFが非常に人気ですね。
日本株に比べ、成長率や還元率も高く、経費率の低さが魅力です。
今回は数ある米国ETFの中でも、高配当株式ETFとして、注目を集める「SPYD」について分析していきます。
配当利回りを重視する方は、参考にしてみてください。
忙しい人のためのYouTube
SPYDとはどんなETF?
SPYD(SPDR ポートフォリオ S&P500 高配当株式ETF)は、S&P500の構成銘柄のうち、高配当な上位80銘柄をあつめたETFです。
運用会社は、米State Street(ステートストリート)社です。
ブラックロック、バンガードに次ぎ、世界第3位の運用会社です。
SPYDの基本情報
株価:27.9$(2020年7月5日)
配当利回り:4.36%
配当月:3,6,9,12月
純資産額:19.6億円(2020年2月末)
設定日:2015年10月21日
80銘柄の組入比率は、ほぼ均等で、1銘柄あたり1.25%になるよう配分されています。
年に2回(1月と7月)のリバランスの際に、
利回りが低くなった銘柄を入れ替えたり、
銘柄の組入比率が均等になるよう調整します。
構成銘柄やセクター比率も、
このリバランスで都度変化します。
他のETFのように、
時価総額に応じた比率ではありません。
以下2020年3月の上位構成銘柄です。(State Street HPより引用)
Name |
Ticker |
Weight |
Sector |
Gilead Sciences Inc. |
GILD |
1.74 |
ヘルスケア |
L Brands Inc. |
LB |
1.62 |
一般消費財 |
Crown Castle International Corp |
CCI |
1.56 |
不動産 |
AbbVie Inc. |
ABBV |
1.56 |
ヘルスケア |
Dominion Energy Inc |
D |
1.50 |
公益事業 |
Duke Energy Corporation |
DUK |
1.49 |
公益事業 |
General Mills Inc. |
GIS |
1.47 |
生活必需品 |
Philip Morris International Inc. |
PM |
1.47 |
生活必需品 |
Iron Mountain Inc. |
IRM |
1.46 |
不動産 |
Digital Realty Trust Inc. |
DLR |
1.46 |
不動産 |
1位のGilead Sciences Inc.(ギリアド・サイエンシズ)は、
バイオ医薬品企業で2020年の1月に組入れられました。
2位のL Brands Inc.(Lブランズ)は、
アパレルや美容製品を販売する小売業です。
3位のCrown Castle International Corp(クラウン・キャッスル・インターナショナル)は、米国の無線通信タワーのREITです。
いずれも3%後半から5%を超える高配当銘柄となります。
SPYDの魅力
配当利回りの高さ
SPYDの配当利回りは、高配当株式ETFの中でも最高水準です。
SPYDと同様の、高配当株式の代表的なETFとして、HDVとVYMがあります。
よくSPYDと比較されることが多いですね。
2つを簡単に説明すると、
HDV(iシェアーズ コア米国高配当株 ETF)
・ブラックロック社が運営
・モーニングスター配当フォーカス指数に連動
・75銘柄で構成
VYM(バンガード・米国高配当株式ETF)
・バンガード社が運営
・FTSEハイディベデンド・イールドインデックス指数に連動
・399銘柄
SPYDの配当利回りは4.36%
HDVやVYMよりも高い水準です。
上記グラフは、SPYDとHDVの2016年3月~2020年3月までの配当利回りです。
引用: ETFreplay.com「ETF Dividend Yield」より
上記グラフはSPYDとVYMの2016年3月~2020年3月までの配当利回りです。
SPYDの配当利回りは他2つを大きく上回っていますね。
現在コロナショックで株価が下落し、利回りが上昇していますが、これまでも3~5%の高い水準でした。
株価暴落時でも、この配当金が精神安定剤になりますね。
SPYDの配当金の推移は、以下のようになっています。
SPYDが設定されたのが2015年10月のため、まだデータが少なく、参考にするには十分とはいえませんが‥
連続増配というわけではありませんが、安定した推移になっています。
経費率が低い(低コスト)
ETFのコストには、売買コストと保有コストの2種類があります。
売買コストは、その名の通り株式と同様に、売買委託手数料のことですね。
保有コストは、主に信託報酬のことで、ファンドにかかる総費用のことです。
経費率は保有コストで、1年にかかる費用が、純資産額総額に対してどれくらいなのかの割合になります。
いくら高配当でも、経費率が高ければ、意味がありません。
ETFを選ぶ際経費率の低さは、非常に重要視される数値です。
SPYDの経費率は0.07%
高配当株式ETFの中で最も低コストです。
この経費率の低さは、
純資産額の多さに関連しています。
スケールメリットになりますが、
経費率は純資産額が多いほど抑えることができるのです。
SPYDはからまだ4年と短い期間ですが、
20億ドルの純資産額になっています。
分散投資で低リスク
いくら高配当な安定株でも、予測不能な事態で、株価が暴落するリスクは無くなりません。
SPYDは80銘柄で構成されいるため、分散投資によるリスク低減や、安定的なリターンを期待することができます。
たとえば、自身で80銘柄を購入して、半年ごとにリバランスを行うことも可能かもしれませんが‥
それでは資金や手間、売買手数料がかかり、現実的ではないですよね。
SPYDは4%を超える配当利回りなので、リスクのある個別株よりも、低リスクでハイリターンが狙えると思います。
SPYDのリスク
セクターの偏り
以下はSPYDのセクター比率をあらわしたグラフです。
引用:State Street HP「SPDR® Portfolio S&P 500® High Dividend ETF」より作成
SPYDのセクター比率は、高配当である「不動産(REIT)」が、常に高い比率を占めています。
SPYDのセクター比率の比較対象として、S&P500の比率を見てみましょう。
SPYDはS&P500をベースとしているものの、セクター比率はかなり異なりますね。
S&P500には、情報技術やヘルスケアといった、成長性や安定性のあるセクターが上位を占めています。
「高配当であること」が、SPYDの構成銘柄の第一条件となるため、成長性や安定性は二の次になります。
そのためセクター比率に偏りが出たり、業績が懸念される銘柄や、市場評価の低い銘柄も組み込まれています。
セクターに偏りが生じると、分散投資がうまく活かせず、リターンが落ちる可能性もあります。
現に「VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)」という、米国市場に上場する全て企業をほぼ網羅しているETFと、SPYDのトータルリターンを比較してみると‥
引用: ETFreplay.com「ETF Charts」より
上記グラフは、過去3年間のSPYDとVTIのトータルリターンです。
直近はコロナショックの影響で、ともに激しく下落していますが、総合的にVTIのほうが明らかに高いですね。
SPYDは高配当であることが最優先されるため、優良銘柄が含まれない事象は否めません。
米国株と同様税金がかかる
SPYDは米国ETFとなるため、米国株と同様に配当金に米国分の税金も課せられます。
配当金を受け取る際、現地課税として10%自動で差し引かれ、さらにそこから国内課税として20.315%引かれるのです。
これでは日米で「配当の二重課税」となってしまうので、それを調整すべく「外国税額控除」という制度があります。
外国税額控除は一定額を所得税額から差し引くことができるので、税負担が軽減されます。
ただし外国税額控除の適用を受けるためには、確定申告が必要となります。
多少手間がかかってしまうのが難点です。
また米国ETFはドル建てとなるため、
円貨決済の場合は為替手数料が発生します。
まとめ
SPYDは配当利回りが非常に高く、
それでいて経費率は0.07%と激安です。
80銘柄という高い分散性と、
リバランスで減配リスクも軽減できるでしょう。
米ETFに投資を検討している方は、
選択肢の1つにいれみてはいかがでしょうか。
コメントを残す